トート
ちなみにTrolltungaは、英語だとTroll’s tongueになります。ゲームなどでもおなじみの妖精・トロールの舌というわけですね。
目次
- Trolltunga「トロルの舌」の場所と行き方 日本から北欧へ
- トロルの舌 登山シーズンと気温・服装について
- 近郊の町ODDAのホテルとトロルの舌への行き方
- 0km スタート地点 Skjeggdal駐車場
- 0~4km 難易度は減ったけど距離が8kmも伸びた
- 4~5km つかの間のハイキング
- 5~7km トロルの舌登山中、一番の難所
- 中間地点 「トロルの舌」まで残り7km
- 小休止① Trolltunga登山に向けての準備・練習
- 8~9km 岩と雪と苔の世界
- 9~12km フィヨルドの絶景と高山植物
- 小休止② 飲み水と給水について
- 13km 絶景の中、「トロルの舌」を視界に捉える
- 14km ついに「トロルの舌」に到達!
- 服装と持ち物について
- 14~28km 雨ニモマケズ 風ニモマケズ
- トロルの舌トレッキング、制覇!
- 「トロルの舌」登山にかかった費用は?
- まとめ 一生の思い出「トロルの舌」
Trolltunga「トロルの舌」の場所と行き方 日本から北欧へ
▲Trolltunga(トロルトゥンガ)の場所。
日本からノルウェーへは、2017年時点で直行便はありません。今回は日本→フィンランド→ノルウェーというルートを取りました。JALも所属しているワンワールド・アライアンスのフィンエアーを利用しました。
マイルのおかげで、快適なフルフラット・ビジネスクラスに無料で乗ることが出来ました。さすがはフィンランドの航空会社ですね、機内のアメニティや食器はすべてマリメッコもしくはイッタラ製のもの。現地に着く前から北欧気分が盛り上がります。マイレージの貯め方に興味のある方は以下のANAマイル/JALマイルの貯め方をまとめた記事をどうぞ。
さて、通常、「トロルの舌」を目指す場合、まずはノルウェー第2の都市ベルゲン(Bergen)に入ります。首都のオスロは今回スルーです。最寄はベルゲン空港(Bergen Airport)。第2の都市といっても人口30万人程度で、かなり規模は小さいながら、世界遺産ブリッゲンを擁し、各地のフィヨルド観光の出発点ともなる観光都市です。
▲ベルゲンの世界遺産「ブリッゲン」地区
ベルゲンから直接「トロルの舌」トレッキングの出発点Skjeggedalへ向かうこともできなくはありませんが、レンタカーは必須で、2時間半程度かかります。日が暮れる前に安全に下山するためには、朝相当早くにベルゲンを発たなければならず、なおかつ、10時間以上のトレッキングを終えたあとで、運転して戻らなければなりません。これはおすすめはできません。
わたしを含めてほとんどの登山客は、「トロルの舌」に程近い町、オッダ(Odda)に宿を取ります。オッダへはベルゲンからバスで3時間。また、ベルゲン→ローゼンダール(Rosendal)へのフィヨルド船が出ており、わたしはこれを利用しました。ローゼンダールからオッダにはバスが通っています(ノルウェーの定番フィヨルド観光プラン「Hardangerfjord in a Nutshell」に組み込むことも可能)。ベルゲン~オッダ周辺のバス時刻表はこちら。
オッダには最低でも2泊することをおすすめします。というか、ほぼ必須です。10時間以上のトレッキングですから、準備も含めれば丸一日を要します。オッダに到着した日の翌朝早くに登山を開始し、夜戻ってくるのが基本的なプランとなります。
また、天気に関しても要注意です。年々人気となっていることもあり、ろくな装備や用意をせずに挑戦して、遭難・救助される外国人観光客が急増しているとのこと。ノルウェー観光局はあらためて注意喚起を促すサイトを今年公開しています。わたしの持ち物は後述しますが、どれだけ装備を整えても、悪天候の場合は無理せずに見送りましょう。体力に不安のある人はガイドを雇い、その判断に従うのも一案かと思います。
その意味では、2泊に加えてもう一泊できると時間的な余裕があってよいと思います。好天の日を狙えますからね。「3泊もあったら時間つぶしに困る」と思われるかもしれませんが、オッダ一帯はフィヨルドや氷河の中心地なので、ツーリスト・インフォメーションに行けば、より難易度の低い、様々なガイド・アクティビティを紹介してもらえます。
わたしはトロルの舌へ行く前日に、ローゼンダール発の氷河ツアーに参加しました。はじめてアイゼンを装着して雪山を登っていったんですが、風と寒さが想像以上でしたね~。むちゃくちゃきつかった……深い雪は歩くのにかなり体力が必要で、クレバスへの不安など神経も使うため、トレッキングの前日に氷河に登るのはお勧めしません(笑)。でも、楽しかったですけどね。
その他にもカヤックやロック・クライミング、別ルートのトレッキングなど、いろんなアクティビティをこの地域では楽しむことができます。
トロルの舌 登山シーズンと気温・服装について
「トロルの舌」のシーズンは、3つに分かれています。
- 夏(6月15日~9月15日) 誰でもガイドなしで登山可能
- 春、秋(9月15日~10月15日、3月19日~6月15日) ガイドが同行する場合のみ登山可能
- 冬(10月16日~3月18日) 登山禁止
6月~9月、とくに7・8月が夏のハイシーズンだと言えます。わたしが登ったのは2017年8月7日のことです。登っている間に、山らしく天気はめまぐるしくかわり、日差しが強くてサングラスが必要な青空から、どしゃぶりの雨までさまざまな天候を経験しました。平地では20度ほどの気温でしたが、頂上付近には雪が溶けずに残っています。そこに雨が降り、風が吹くと本当に寒いです。全ての天候に備えて登りましょう。
では、前置きが長くなりましたが、いよいよ出発!
近郊の町ODDAのホテルとトロルの舌への行き方
「トロルの舌」のベースキャンプにあたるオッダで泊まったのは、HARDANGER HOTELという宿です。夏のシーズン、オッダのホテルはすぐに満室となります。もともと小さな町なので、宿の選択肢は豊富とは言えません。行くことが決まったら、すぐに宿の手配をしておきましょう。
わたしが泊まったODDAのハーダンガー・ホテルでは、80NOK(ノルウェー・クローネ)を払うと、朝食ブッフェを利用してサンドイッチを作り、「トロルの舌」登山に持っていくことができます(自分で具材を選んで作る)。おそらく多くのホテルで似たようなLUNCH PACKがあるので、聞いてみると良いでしょう。
▲ホテルの部屋からの眺め。赤い建物がツーリスト・インフォメーションです
HARDANGER HOTELの目の前にはツーリスト・インフォメーションがあります。すぐ横のタクシー・スタンドから、登山の出発ポイントSkjeggedalまでバスが出ているので便利です。朝は6:30、7:30、8:30と一時間おきで、30分程度でスタート地点に着きます。
なお帰りのバスに関しては19時30分の便が最終ですが、タクシー会社が夏のハイシーズンのみ臨時のミニバスを走らせており、「夜通し走ってるよ」とのことでした。いずれにしても、なるべく早く出発して、可能な限り早く下りてくるのが鉄則です。まぁ北欧なので夏は相当遅くまで暗くなることはないので、その点では心配いりません。だいたい23時ころに日没となります。
0km スタート地点 Skjeggdal駐車場
バスを降りると、最後の売店とトイレがあります。とくに女性の方、28キロの間、トイレは一箇所もありません(一応緊急用の避難小屋はあるから、そこにはあるのかも……?)。ここですっきりしておきましょう!
道中はかなり見通しのよいところが多く、森のなかに隠れて……というのは難しいです。森や木立などは、ほぼありません。大きな岩の陰に隠れて用を足すこともできなくはないですが、その機会は非常に少ないです。
ここの売店ではお土産に加えて、飲み物やトレッキングブーツなどを売っていますが、ここで登山用具を買っているようではいけません。早朝には閉まっていますしね。唯一、登山用ポール(ストック)は買ってもいいかもしれません。
0~4km 難易度は減ったけど距離が8kmも伸びた
実は、つい少し前までは、「トロルの舌」トレッキング最大の難所はスタート直後、そして戻ってきたときのゴール直前だと言われていました。それは急坂の岩場を、一気に直登する必要があったからです。またさらにその前は、数千段に及ぶ作業用の木の階段を昇るルートもありました(危険なため閉鎖された)。
▲閉鎖された資材用階段。それを横切る新道が見えます
ところが、その急坂な岩場をつらぬいて敷かれた新しい道路が、数週間前に開通したばかりだと聞かされました。これはラッキー!と思ったのですが、難易度が下がった分、往復で8kmあまり総歩行距離が伸びる結果となりました。これにより、20km程度だったトロルトゥンガ・トレッキングは27〜28kmに及ぶ長さとなりました。いきなり8kmも距離が伸びたなんて聞いてないよ……?
まぁ難易度と距離のどちらが良いんだか、って感じですね。新たに切り開かれた道路は、標高800mまで九十九折で続き、正直言って、歩いていて大して面白い道ではありません。なんなら、この区間のみ、タクシーで上まで行くズル(笑)をすることもできます。タクシーを使う人はほぼいなかったですけどね。
それでも徐々に高度を上げていくと、きれいな山並みとダムのような湖が見えてきます。駐車場も小さくなり、いよいよ始まるんだな、とワクワクしてきます。
4~5km つかの間のハイキング
登山開始から1時間が経過し、4kmほどの新道を登りきりました。標高800mに到達です。車両はここまでしか来る事はできません。あとはひたすら歩くのみです。
▲「ゴミは持ち帰れよな!」の声とともに、1キロごとに残りの距離をトロール君が教えてくれます。
すぐ脇では岩場をつたう水流がごうとうと音を立てていて、気持ちがいいです。この辺りの1、2キロはかなり平坦で、天気もよく、楽しいハイキングといった雰囲気でした。とはいえ足元は岩場や泥、水流などを通るのでうっかりすべらないよう注意が必要です。
ポールが立っているので、それに沿って進みます。この辺では、まず迷うことはありません。ところどころに水流を越える小さな木製の橋が設置されています。このエリアは整備が進められているようです。
▲とはいえ、前日までの雨で泥がぬかるんでいるところも多い。スニーカーなんかだとグチョグチョになって死にます
5~7km トロルの舌登山中、一番の難所
つかの間のピクニック・エリアが終わり、上り坂にさしかかります。スタート地点の厳しい岩場に新道が開通したため、全トレッキング区間を通じて、もっとも険しい登りとなったのがこの区間です。全面岩場で、ひたすら登りが続きます。上の写真のプレートには、Trolltungaトレッキングの距離と標高が記されています。まだ総距離が20km強だったときのものですが、横軸3〜4kmの部分がこの区間に該当します。
登っているうちに、太陽が上ってきました。長袖を脱ぎます。ところどころに2、3メートルほどの大きな岩がどっしりと腰をすえています。その上に座って一息つく登山客も多かったです。
▲通ってきた平坦なハイキング・エリア
やがて、残雪が溶けずに残っている高度まで到達します。登山中とはいえ、風が吹くとかなり冷えます。脱いだ長袖を再び着て、しばらくしたらそれでも寒いので、ゴアテックスのレインウェアを羽織りました。登山の基本ですが、重ね着をして、適宜脱いだり着たりして、体温を調節しましょう。
ようやく登りおえて、ここで初めて10分ほどの本格的な休憩を取りました。もぐもぐとおやつなどを食べる。塩羊羹おいしい。
振り返ると、もう坂の下にあるハイキング・エリアは見えなくなっていました。
中間地点 「トロルの舌」まで残り7km
登山開始から2時間半経過。難所の岩場を登りきる少し手前で、トレッキングの中間地点「あと7キロ」の標識に到達します。「まだ半分か!」と思ったんですが、よく考えたら帰りもあるため、本当は「まだ4分の1か!」が正しいんですよね……長丁場です。
黄色いプレートには「残り4キロの標識に着いた時点で、13時を過ぎていたら危険なので引き返せ」とあります。街灯などは道中一切なく、真っ暗闇になりますからね。ただしこれは8月15日~6月15日の間にだけ該当する警告で、夏の間は、白夜の影響で相当遅くまで陽が沈むことはありません
小休止① Trolltunga登山に向けての準備・練習
「トロルの舌」の中間地点まで来たので、出発前の準備の話を。わたしはふだんは東京で仕事をしているんですが、デスクワークでとくに運動をしているわけでもありません。さすがにいきなり20キロ以上の山道を歩くのは不安があったので、景信山~小仏峠〜高尾山というルートを二回、練習としてこなしておきました。
登ったのは、ノルウェーに出発する一週間前と、三週間前のことです。景信山~高尾山のルートはおよそ11キロ。Trolltungaの半分以下ですが、ふだん山に入ることのない人間からすると、とりあえず10キロ歩いておくだけでも、良い予行演習となります。
▲景信山の茶店にいるワンコ。かわいいです。おにぎりへの熱い視線!
また、このルートだと途中に茶店が3~4軒ヶ所あり、極端な話、完全な手ぶらでいっても食べ物や飲み物に困ることはありません。体力的にしんどかったらバスで途中離脱するポイントもありますし、高尾まで着けばケーブルカーで下る選択肢もあります。東京近郊にお住まいの方にとっては良い練習ルートになると思います。
「トロルの舌」は標高1,250メートル付近に位置しています。高尾山は標高599メートルなので、倍の高さということになります。
「トロルの舌」は岩場が半分以上を占めるため、底の硬い、しっかりとした登山靴は必須です。もっとも重要な装備と言ってよいと思います。新たに登山靴を購入したら、靴ズレ対策のためにも、このような手近な山に登っておきましょう。
8~9km 岩と雪と苔の世界
話をノルウェーに戻して。もっともきつい登りを終えると、そのあとはそれほど激しいアップダウンはありません。一気に高度が上がったため、残雪がそこかしこに見え、小さな泉も姿を現します。淡い緑色の苔がついた岩がいくつも積みかさなっており、緑と灰と黒と白が入りまじって、異世界めいた光景を生んでいます。
また、岩を積み上げたケルンがこの辺りから現れます。赤く書かれたT字がトレッキング・ルートの目印です。それほど目立つものでもないので、うっかり見落としがちです。幸い、この日はそこまで濃い霧は出なかったのでよかったですが、濃霧の場合はくれぐれも前方をよく確認してから進むようにしましょう。登山客の多い夏場であれば、まず迷うことはないと思いますけれど。
残り5キロ地点。出発してから3時間弱経過。その少し先に、緊急の避難小屋があります。
中は覗かなかったのでどんな施設なのかわかりませんが、観光客の増加とともに、捻挫や骨折、疲労して動けなくなるなど、救出されるケースが増えているそうです。その際に使用されるのでしょう。道中では唯一、救助隊が常駐しているらしい小屋も反対側にありました。
9~12km フィヨルドの絶景と高山植物
さすがに10kmを超えると、疲労感が出てきます。しかしやがて、ノルウェーならではのフィヨルドが作り出した美しい景色が眼前に広がります。その光景に一気に気分も変わり、足取りも軽くなりました。
フィヨルドらしい険しい山肌と、それを鏡のように映し出す湖。スケールの大きな眺めは神々しくも感じられます。思わずほぅ、とため息がもれました。疲れも吹き飛ぼうというものです。
地元の人に聞いたのですが、ノルウェーでは私有地であっても、誰もがテントを張って泊まる権利があるのだそうです。さすがアウトドア大国ですね。こんな絶景のなか、テントを張ってキャンプしている人がいました。
どんな5つ星ホテルやファーストクラスでもかなわない、贅沢な場所だと思います。朝夕などはこの景色を独占できるのですから。おそらくは満天の星空となる夜はどんな気持ちがするのでしょうか。
また、この前後から高山植物が姿を見せるようになります。花弁は小さく、決して派手ではないのですが、緑と灰の景色のなかで目にしたその色は鮮烈でした。かわいいだけではない、植物らしい強さを感じます。そんなに花好きというわけではないのですが、前に進む元気をもらった気がします。
フィヨルドの対岸、遠くの山々に目をやると、白い糸がたなびくようにして、滝が何本も落ちています。
このあとも、基本的にフィヨルドを横目に見ながら、その崖沿いに進む形となります。巨大な水面が見えるだけでだいぶ気分が違います。
▲ここにもテントを張っている人が。スケール感が分かるかと思います。
残り3km。この先に、最後の避難小屋があります。
小休止② 飲み水と給水について
登山において水分補給は生命線とも言えると思います。ノルウェーは珍しく水道水がそのまま飲める国なのですが、Trolltungaの場合、豊富な水量をほこる滝の水をそのまま飲むことができます。
だいたい10kmを過ぎると現れるこのようなポイントで、上のほうに回って給水しましょう。わたしは出発時には1リットルの水を持っていきました。少ないようですが、途中で補給できるため、10時間以上の道のりとはいえ、それで十分でした。
決してお腹が丈夫なほうでもないのですが、飲んだ後もとくに不調になることもなかったです。それになんといってもキンキンに冷えた山水は美味しい! ぜひ味わってみてください。ポカリスエットの粉などを持っていくのも良いと思います。
13km 絶景の中、「トロルの舌」を視界に捉える
この辺りになると、無言でひたすら歩き続けるのみです。いろいろと考え事をしていたような、無心で歩いていたような、今となっては思い出せない不思議な感覚です。それまで以上に岩がちなルートとなり、小川の中をジャブジャブと進まなければならないことも。さらに悪いことには、このあたりから、それまでもっていた天気が崩れて、ぽつぽつと雨が降り出してしまいました。
▲お分かりいただけるだろうか、崖に浮かぶ無数の人影……。ついに「舌」が見えてきました
残り2キロをすぎたあたりで、他の登山客が立ち止まって、なにやら目を細めています。よくよく観察してみると、フィヨルドの対岸の一箇所に、カラフルな豆粒が集まっているのが見えました。登山客が着ている原色のレインウェアです。あれこそが目指すトロルの舌に間違いありません。そして舌から脚を踏み外したら、崖下までなにもないことが分かります。
かなり気温も落ち、雨足が強くなるなか、ラストスパートで先を急ぎます。雨に濡れた岩場は段差や曲面の岩も多く、かなり進むのが大変です。
▲ラスト1キロ!
波打ったような、でこぼこの岩場が続きます。進行方向を確かめて歩かないと、とても越えられないような高い段差にぶつかります。とくに霧が出てきたら気をつけて歩を進めたい場所です。80センチほどの岩の段差を昇り降りしなければいけない場面などもありました。
14km ついに「トロルの舌」に到達!
そして、ついに! 目的地・トロルの舌に到達しました。登山開始から5時間が経過していました。何度も写真で見た光景、うねるように連なるフィヨルドに突き出た、細い岩場が目の前にあります。
突き出している岩の部分は10メートルほどでしょうか? 岩を取り囲むようにしてみな写真を撮ったりしていますが、そこも崖の上ギリギリのところです。
冒頭で書いたように、ノルウェーは7〜8月こそ観光シーズン真っ只中で、もっとも登山客が多い時期です。「トロルの舌」岩に乗るには行列ができているので、到着したという感慨に浸るまもなく、とりあえずはすぐに列に並びます。混んでるときは、これ大事。
▲いたるところ崖っぷち
フィヨルドを眼下に望む崖の真上ということで強風が吹きあげ、写真ではほとんどわかりませんが、霧雨状の雨が激しく打ち付けます。今までと違って動いていないので、みるみる体温が奪われ、待っている間は歯がガチガチと鳴るほどの寒さでした。たとえ夏のシーズンでも、フリースや薄いダウンを持っていくことを強くオススメします。それと、下はジーンズだけはやめておきましょう。雨が降ったら絶望的です。
▲左上の地点から立ちションしてる男もいました…… 。柵の類いは一切ありません
待ってる間に、岩の上の人のポーズを見るのもおもしろいです。ジャケットを脱いでヨガをやる人、本を読むふりをする人、プロポーズをする人までいました。が、とにかくあまりにも寒かったので「なんでもいいから、早く変わってくれ~」と念じながら待っていました(笑)。
40~50分くらい待ったでしょうか。いざ自分の番! となるとなにをしたらいいものか、まごついてしまいました。とりあえず岩の真ん中までいって、
「やった~!」このポーズのままジャンプしたんだけど、写真で見たら全然わかりませんでした(笑)。横を向いてマリオみたいに飛ぶべきでしたね。
ここまできたらあとには引けぬ、というわけで先端に座ってみます。雨で濡れた岩の上ですが、怖いとか言ってる場合じゃないんです。寒さで半分おかしくなってますし。
岩は若干上向きに突き出ているので、写真で見るよりは安全かと思います。ここ数年の落下事故では、残念ながら一人の方が亡くなったそうですが、それも「舌」の上からではなく、待っている間に落ちてしまったのだとか。
さらに両手を上げてカメラの方を向こうとしたんですが、このときが一番怖かったです。列を待っている間に体中が寒さでかじかんでおり、ミシミシと筋肉が音を立てているのではないかと思うほどぎこちない動きしかできません。身体を捻るとバランスが崩れそうになって、ゾクリとしました。
ともあれ、日本からここに座るためだけにやってきたので、無事に達成できて嬉しかったです。本当はもっとトロルの舌付近を探索したかったのですが、雨と風が強烈で、人もどんどんいなくなるので、帰路に着きました。また14kmのトレッキングスタートです。
服装と持ち物について
下りのレポートに入る前に、「トロルの舌」への持ち物・装備についてご紹介したいと思います。
冒頭でお話しした通り、日本→フィンランド間は貯めたマイルを使ったので無料だったのですが、その分、いちから登山グッズを集めたため、だいぶお金がかかりました! いやー登山グッズって高いですねぇ……全部で10万円以上かかりました。職場の近くにモンベルがあり、ふるさと納税のクーポンもあったのでだいたいはそこで揃えました。
「トロルの舌」登山にあたっての装備と服装
発汗や透湿性を考慮しないとシャレにならないということは理解していたので、きちんとした登山用具を買いました。
- ゴアテックスジャケット
- 薄手のダウン
- 登山用長袖シャツ
- 登山用Tシャツ×2枚
- 登山用肌着×3枚
- 登山用靴下
- 登山用手袋
- 登山用パンツ
- ゴアテックスパンツ
- 登山靴
- 登山ストック(ポール)
- 防水スプレー
- 偏光サングラス
- キャップ
- タオル
ゴアテックス・アウター:Mont-bell レインダンサー
ゴアテックス製品です。防水性能だけではなく、頂上付近では風も強力なので、いわゆるハードシェルのジャケットは必須です。標高1000メートルを超えますし、なんといっても北欧、北国です。氷河や雪が溶けずに残っている地域です。
下半身は防水パンツは不要だと思われるかもしれませんが、荒天に見舞われた場合、絶対にあったほうが良いです。夏場でも頂上ではかなり冷え込みますから、ぐっしょり濡れたパンツなど想像もしたくありません。くれぐれもデニムはやめましょう。
長袖、Tシャツ、肌着
汗をいかに逃すかが鍵といってもよいので、シャツや肌着は吸収・速乾・透湿にすぐれたものを買いました。肌着は3枚。いずれも化繊のものです。コットンのTシャツなどは絶対に止めましょう。濡れると冷える一方です。しかし登山メーカーというのはモンベルに限らず、なんにでも自社ロゴを入れないと気が済まないんですかねぇ。
登山ブーツ SALOMON
こちらは石井スポーツで買いました。店員さんに勧められた購入時にはこんなに本格的なものはいらないかな?と思っていたのですが、正解でした。写真の通り、大部分が岩場の登山となります。何度もガツンガツンと岩をつま先で蹴りましたし、尖った岩先を踏むこともありました。やわらかく履き心地のよいスニーカーなどを履いていたら、激痛が走ったはずです。つま先やソールがしっかりと補強された靴のおかげで、ほとんどダメージはありませんでした。
加えて、雨に濡れた高低差のある岩場ではグリップ力が鍵になります。怪我の防止にもつながります。20キロを歩いたあとの下りが一番危険なので、その際足をくじかないためにも、足首を固定できるタイプのものが良いですね。
とにかく、すべての持ち物の中で、靴が一番重要だと感じました。安心して快適に登山を楽しむためにも、必ずしっかりとした防水登山靴を用意しましょう。
靴に合わせて、インナーソウルも買いました。これもまたあるとないとでは安定感が大違いですね。お店で体験してみるのも良いと思います。
・靴下
登山用の厚めの靴下にしましょう。代えを一足分持っていくとよいです。頂上で履き替えたらリフレッシュできるでしょう(雨が降ってたので、ブーツを脱ぐのが面倒くさくてあきらめましたが笑)。
ダウン
薄手のダウンジャケットです。何度も書いていますが、頂上では8月であっても非常に寒いです。もちろん天気によるのでしょうが、すべての天候に備えるということを忘れないようにしましょう。
トレッキングポール
ストックはまぁいらないと言えばいらないのですが、今回のように雨が降ったときは俄然力を発揮します。とくに下りにおいてその効果は顕著で、極端に言えば四足動物のようにバランスを取れるわけですから、これもまた持っていって良かったです。お安くはないので、迷うところですけどね。
食べ物とおやつ
おやつは1000円まで! いろいろもって行きました。カロリーメイト、ソイジョイ、カントリーマーム、塩ようかん、チョコレート、柿ピー、おかき、ハチミツ梅干など、日本から持ち込んだもの。それに宿で作ったサンドウィッチ。
サンドウィッチはトロルの舌付近で食べようと思ったのですが、雨がじゃんじゃん降っていたので、結局口にすることはありませんでした。濡れそぼったサンドウィッチとか、食べたくないですからね……。最初からランチは割り切って、カロリーメイトやソイジョイなどで済ませてしまうのも、ありかもしれません。
おやつ類は疲れたときの気分転換にいいですね。小分けにされた柿ピーをポリポリつまみながら歩くのも良かったです。蜂蜜付けの梅干しもリフレッシュできました。
14~28km 雨ニモマケズ 風ニモマケズ
▲どんどん天気が悪くなるので、舌付近にいる登山客の顔も疲れ気味
同じ道を戻るだけなので、帰りの記録はサクッと。雨が強くなったらいやだなぁと思いつつ、とにかく先を急ぎます。岩場はかなり歩きにくかったです。「トロルの舌」から1〜2キロの区間は暴風雨のようで、顔を伏せてひたすら歩くだけ。写真を撮る気力もありませんでした。他の登山者も少なく、霧が出ていると、帰路とはいえ道を見失いがちです。
カメラについて
写真を撮らなかった理由は、雨足が強かったせいでもあります。持って行ったのはSONYのRX100 M3。
評判のいいRX100シリーズの中では一番コスパが優れているように思います。そしてiPhoneでも写真を撮っていましたが、どちらも防水仕様ではないので、強い雨が降っている間は、あまり撮影できませんでした。RX100はとてもいいデジカメだと思うのですが、こうしたアウトドア活動の際には躊躇いなく使える防水カメラのほうが使い勝手がいいように思いました。
よく言われるように、登山は登りよりも下りの方がきついです。まして雨に濡れていますので、難所の坂道では手こずりました。ストックを駆使して慎重に降りていきます。ただ日本で練習に行っていたおかげか、太ももがプルプルするようなことはなかったですね。
それでも20kmほどの地点で、かなり小雨になり、太陽も時折雲の切れ間から差し込むようになりました。
21〜22km地点の難所の下りにさしかかった頃には、小雨がぱらつく程度。最後の休憩を取ります。おかきが美味い! 感動して写真撮りました。
難所を下りてハイキング状の平地に着くと、日差しも強く、きらきらと輝く雨上がりの景色が待っていました。上で見たフィヨルドにも劣らないほどにきれいな光景でした。
ついに文明圏に降りてきた! ずるっこタクシーが待っています。このときの誘惑たるや(笑)。でもここまでくれば気楽なもので、のんびりと山並みを眺めながら足を進めました。あとは4キロの九十九折の道を下れば、地上に着きます。
トロルの舌トレッキング、制覇!
そして、到着。無事に28キロの道のりを終えることができました。その辺にいたおっさんと握手しました(笑)。疲れてはいましたが、達成感のおかげか、だるさはありませんでした。時間にしておよそ10時間半。だいぶ岩の手前で待ったことや、途中から雨が降ってきたことを考えれば、まずまずのタイムですかね。
歩き終えたブーツとストック。お疲れさまでした。道具への愛着がわきます。
後日iPhoneの計測を確認したところ、この日の歩行距離は31キロでした。我ながらよく歩きました。絶景といえるようなフィヨルドだけでなく、かわいい花や苔むした不思議な岩肌など、登るにつれていろんな光景が現れるので、思いのほか楽に登山を終えることができたと思います。
体力はどの程度必要?
健康な成人であれば、天気さえ良ければ最悪、ぶっつけ本番でもできなくはないと思います。難所を超えてしまえばアップダウンはそれほど多くないですから。小学生高学年程度の子供も歩いていました。
ただし言う間でもありませんが、天候に大いに左右されます。きちんとした装備を持っていくことは絶対条件です。靴と、雨と寒さへの備え。水と十分な食料。1シーズンに何人も観光客が救助されています。準備をした上での事故なら仕方がないですが、山の基本はあくまでも自己責任ですからね。
すでに書きましたが、登ることを決めたなら、10キロ程度の登山に行ったり、ジムでトレーニングするなど、練習をしておきましょう。まるで違いますよ。
帰りのバスに乗り、オッダの街には、夜7時過ぎに着きました。登山が成功したことを記念してお酒や大量の食べ物を胃に入れたら、すべて戻してしまった人の記事を読んでいたので、頂上では食べることがなかったサンドイッチだけ食べて、ゆっくりと休みました。
「トロルの舌」登山にかかった費用は?
純粋に「トロルの舌」登山に限れば、せいぜいOddaからのバス代だけです。いくらだったか忘れましたが、数百円でしょう。登るのにトレッキング料金はかかりません。ただ旅行全体で見れば、北欧とあって、それなりの金額になります。
飛行機代
- 日本→フィンランド:Finnair、マイル使用により無料
- フィンランド→ノルウェー:Norwegian Air、37,500円
冒頭で書いた通り、Finnairのビジネスクラスを利用しましたが、マイル利用により無料でした。やはりマイレージの恩恵は大きいですね。とくに日本(東京、名古屋、大阪、福岡)→ヘルシンキのルートは、アジアマイルを使うと80,000マイルでフルフラットのビジネスクラスを利用できる穴場ルートになっています。
ただ現実問題、アジアマイルはかなり貯めるのが難しいマイレージなので、同じワンワールドのJALや、ANAマイルを貯めてスターアライアンスを利用するのが現実的だと思います。マイレージの貯め方に関しては次の記事を参考にどうぞ。
ホテル代
物価の高さで知られる北欧。ホテルもまた例外ではありません。ノルウェーでは、ベルゲン・オッダ・ヴォスに泊まったのですが、やはり部屋を考えれば高めのお値段でした。ただNY・ロンドンなどのホテル価格よりはまだ安い気がします。こう言っては何ですが、広大な土地が余っていますからね。本当に節約したい場合は、キッチン付きの宿で自炊をするというのも手かと思います。
ヘルシンキではSPGアメックスのスターポイントを利用して無料宿泊ができたので、これにはずいぶんと助けられました。
スターポイントに限らず、貯めたホテル系のリワードは、このような物価の高い地域で利用するのがお得感がありますね。
まとめ 一生の思い出「トロルの舌」
ノルウェー旅行では、フィヨルドの見どころをめぐるNorway in a Nushellという周遊チケットが定番で、トロルの舌のあと、わたしも利用したのですが、ナットシェルで見たどんな光景よりも、登山中の景色の方が美しく、心に残っています。自分が登ったからという贔屓目だけではないと思います。
アウトドア大国のノルウェーでは、「トロルの舌」ほど難易度の高くない、2〜3時間程度のトレッキングコースが至る所にあります。プレーケストーレンなども有名です。船上からのフィヨルド・ツアーだけではなく、ハイキング・シューズで山並みに分け入れば、ノルウェーの魅力がよりいっそう体験できるはずですよ。
「トロルの舌」、一生の思い出になりました。登ってよかったです。
今、オッダのバスターミナルで書いてます。
自分も昨日雨の中登りました。
あの車道ずるいですよね。おまけに帰りは麓町のバス停まで歩きました。40キロ
装備は①に寒さ②に靴ですね。ぶっつけ本番の自分でスニーカーでは死にました。
マサさん
登ったばかりなのですね、お疲れ様でした!
車道は、まぁ、体力に自信のない方にはいいのかもしれないですね。
スニーカーとは! それは苦労されたと思います。次回があれば登山靴になさってくださいませ(笑)。